パナソニック映像、ルミエール・ジャパン・アワード2017優秀作品賞を受賞した4K HDR作品の制作舞台裏、4K HDRについて語ったインタビューを公開

パナソニック映像は、先進映像協会日本部会主催「ルミエール・ジャパン・アワード2017」のUHD部門で優秀作品賞を受賞した同社制作の4K HDR作品「Carrying a Wish ランタンに願いをのせて」制作スタッフへのインタビューを公開しました。
人間の見た目に近く、リアルで美しい4K HDRで、タイの伝統的なお祭り「ロイクラトン」を題材にした作品で、制作スタッフによる作品の魅力と4K HDRについてコメントが公開されています。
また、制作舞台裏の映像も公開。こちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

–タイのロイクラトンのランタンをテーマに選んだ理由は?

4K HDRを最大限に活かした映像を作るため、どういうものがHDRで映えるのか検討していたのですが、暗部があるところに普通では考えられない位明るい点光源が多いカットが一番HDRに向いているのかなあと。その条件に合うエモーショナルな題材はないかなと探していた時に、ロイクラトンのランタンが、一番条件に当てはまるかなと思い、これを選びました。

安楽直樹
パナソニック映像/ディレクター

–この作品の見所は?

やはりエンディング直前の大量のランタンが空に飛んでいくシーンかなと思います。一番HDRらしさもあるし、
一般的に、結構知られているシーンではあるんですけど。それをHDRで見るとこんなに綺麗なんだなあと思いました。HDRで見た後にSDRでも見たんですが「こんなもの?」って思いましたね。
HDRは本当に「光って」見える。炎のめらめら感や瞬きみたいのも、リアルに感じるんだけど、SDRで見ると
「ま、映像だね」という感じ。HDRだと輝いているから目立つんですよ。それがまったくなくなってただの色として明るい、平面的な映像。 HDRは3Dでもないのに、映像に奥行きを感じました。

「HDR」とは?
High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略。従来の映像方式(SDR)では最大100nit(明るさの度合いを示す単位)までの明るさしか表現できないが、HDRでは最大1万nitまで明るさの範囲を拡張。これまで表現が難しかった、日陰と日向の明暗差の大きいシーンや、ライトや太陽光などの明るい光源、金属の表面や水面の輝きなどの反射光まで、質感豊かに表現できる次世代技術。

–現場で見た風景とHDRで見たのと比べてどうでしたか?

現場は記憶がないんですよ(笑)撮影中は小さいモニタで見てるし、現場はもうとんでもないことになっていたんで。正直完成したHDRの映像のほうが綺麗に見えます。いい意味でも悪い意味でも人間の目ってオートアイリスなんで、暗いところを見たら開いちゃうし、見たいところに合わせて見えちゃうんで、意外といらないものも見えてくる。映像で切り取っていくとそういうことがない。整理されているし、人もあんまり感じなかったりとか。ごちゃごちゃしているものが見えなかったりとか、そういうことも含めてなんですけどね。一番いいところの切り取りで、一番いいところが輝いているってところまで整理されているんで、やっぱり映像のほうが綺麗に表現できていると思いますね。

–ロイクラトンのタイはどんな雰囲気でしたか?

本当なら花火も上がるし、爆竹も鳴らすし、壮大なお祭りなんですけど、ちょうど撮影の1ヶ月くらい前にタイの国王が亡くなって、1年間喪に服すことになったんです。街中の提灯も白1色になりましたが、一ヶ所だけ、少し郊外ですが、色のある提灯があったので、そこで撮影が出来ました。僕としては出演者にタイの綺麗な色の服を着せたいなとも思っていたんですが、町全体が落ち着いた雰囲気で逆に情緒感あふれる映像になったような気がします。

–4K HDR作品を制作する際のポイントは?

分かりやすくHDRってスゴいなぁと思ってくれるカットを入れつつも、全編に渡ってHDRがそんなに目立たないけど、全シーンHDRとして成立しているカットで構成することですね。分かる人が見れば「あ、こんなところにもHDRが効いてるな」というのが分かるように作ってます。誰にでも「HDRスゴイ!」って所もあるし、それ以外のところもちゃんと実はHDRが活かされているという風に。

–今後制作したいテーマはありますか?

オーロラがHDRで表現できたらいいなとは思うんですが、感度が全然足りないので現在は撮影できない。
今だと、高感度カメラかスチルカメラでしか撮れないんです。何とか撮ってみたいなとは思っていますね。

佐藤 洋
パナソニック映像/カメラマン

–今回の撮影に使用したカメラは?

VARICAM35とVARICAM LTというパナソニック4Kのハイクオリティカメラ2種類を使用しました。どちらも4K HDRを撮るのに適しています。VARICAMはHDRに向いているというだけでなく、他のカメラよりも暗部がきれいに撮れるカメラです。ランタンの炎の光と周りの暗い環境を共存できるカメラなのでこれを選びました。また、パナソニックのこのカメラが唯一持っている機能で「デュアルネイティブISO」があります。これはカメラに通常のものとそれより明るく撮れる基盤の2つが入っていて、暗いシーンでもキレイに撮れるんです。Tは35の約半分のサイズなので機動性も良く、レンズも軽量になるので特機を使った撮影に向いています。ステディカムやRONIN等を駆使して監督の目指す、エモーショナルな映像を撮れたと思っています。

–カメラマンとして4K HDRの撮影時に気をつけていることは?

カメラの明るさ、絞りの設定のポイントをどこに合わせるか?ですね。光っている光源はとても明るい。でもその周りの環境が逆光等で暗かったりすると、暗部は暗部で情報が必要になってくる。明るいところと暗いところのバランスをカメラのダイナミックレンジを生かし、どこに合わせるか?それによって情報の残り方が違いますから。バリカムはログ収録が出来るのでログの情報を頼りに設定しています。パナソニック映像ではカメラの開発当時から完成までユーザー目線でのサポートを続けていましたから、どう撮ればいいか一番分かっています。しっかりとしたHDRコンテンツを作るにはカメラの特性を理解してないとこういったきれいな映像は作れません

木村章吾
パナソニック映像/制作担当

–この撮影で大変だったことは?

クライマックスのランタンを上げるシーンは今回の目玉のシーンなんですが、約10分ですべて終わるんですよ。あの瞬間はホントに一瞬です。上げてから1分で点になります。そんな中で一番ベストのタイミングで撮影するために色々と調整して。10分間はもう、まるで戦争状態でした。やり直しはきかないし。予備のカメラも含めて3台で回しました。カウントダウンで一斉にあげましょうって言ってたのに、先走ってあげる人もいて、あわてましたね。

–撮影期間は?

1週間です。今回は2班体制でロケを行なっていたんですが、ロケの最初は雨が降っていて。タイは雨期から明けたばかりだったので、最初の2日くらいは思うように撮影出来なくて、残りの数日でみんなで手分けして撮影したんですが、分かれて撮影すると終了時間も別々。今回は制作で参加していたのでスケジュール調整が大変でした。撮影から帰ってくるとデータを夜通しバックアップして、また朝から撮影、の連続でした。4Kのカメラがいくつもあるとデータ管理が大変です。データ量が大きいですから時間もかかりますしね。

–4K HDRで制作したい題材はありますか?

トルコに行ってみたいですね。昔4K(SDR)で撮影していますが、トルコは映像映えする場所が結構あるんです。世界遺産のパムッカレとか。HDRで撮ればまた前と違った表現が出来ると思いますし、カッパドキアは以前は
雪景色だったので雪のない時に行きたいですね。ウユニ塩湖の映り込みとか水の表現もトライしたいです。

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パナソニック映像

VARICAM Panasonic

先進映像協会

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