【イベントレポート】LEXUS SHORT FILMS 少数精鋭ワークショップ開催 大友啓史監督を講師とゲスト3名によるトークセッション「世界とは、世界と戦うとは」

かんたんに言うと
  • LEXUS SHORT FILMSの一環として大友啓史監督が講師を務め「世界と戦う」をテーマにワークショップを開催
  • 監督、クラウドファンディング、プロデューサーという立場の異なる3名のゲストも迎え、大友監督と意見を交わした
  • 日本の作品には「社会性」が足りないなど、世界と戦う上で必要となるテーマや日本との違いを語った

トヨタ自動車が展開している高級車ブランドLEXUSが実施している若手クリエイター支援プロジェクトLEXUS SHORT FILMSでは、その取り組みの一環として、アジア最大級の国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(SSFF & ASIA)と共に、ワークショップを開催している。

以前からこのプロジェクトについてお伝えしてきたが、今回は、先日(10月14日)開催された第1回目ワークショップイベントに伺う機会をいただけたので、その模様を一部紹介する。

大友啓史監督「世界とは、世界と戦うとは」

10月14日、会場は東京・青山のINTERSECT BY LEXUS。
この日集まった参加者は、事前の応募により選ばれた若手映画作家20名。

ワークショップでは、『ハゲタカ』『龍馬伝』『るろうに剣心』などで知られる大友啓史監督が講師をつとめ、参加者は「世界」をテーマとした事前課題を元にプレゼンテーションを大友監督に向けて実施。大友監督による個別のフィードバックの機会も設けられた。

さらに今回は、ハリウッドで脚本や演出を学び、商業映画の世界で成功を収めている大友監督が、自身の経験も踏まえながら、映画というコンテンツで日本と世界との差と、「世界とは、世界と戦うとは」というテーマで講義をおこなった。

今回、追加募集された特別聴講生10名と取材陣にはこの講義より公開された。

世界と日本の映画を取り巻く環境の違いを講義する大友啓史監督

   
まず、「意識次第で考えてみれば世界はすぐそこにある。」と大友監督は語る。

大友監督:「現代は、YouTubeなどに作品を出している人は、考え方によっては、すでに世界に向けて作品を発表して戦っていると言える。器として、もはや今の時代は、世界も日本も関係ないよと思う。」

大友監督:「ただ一方で、やはり日本の映像は、ネットを通しても海外では視聴者数が少ないと聞く。なかなか観てもらえないんです。これは日本のクリエイティブというものを信用されてないところがある。日本と世界との差を考えると、やはり今一歩クオリティの差があるといわれるんです。」
                                            

  

大友監督:「世界に対してだけでなく、作品のクオリティの違いを意識する時に、自分の作品を自分が客になった時に最後まで観れますか?ということを皆さんに問いたい。自分の作品をクールな目で見ることも必要。そういった意味では、作り手は二重人格が必要なんです。」

題材として世界の人に受け入れられやすいテーマや着眼点とは、という話では、「社会性」を挙げ、個人の美意識を追求したものよりは社会性のあるテーマを持った作品が世界では受け入れられやすいだろうと答えた。その上で、

大友監督:「感度として磨かなければいけないのは、いま社会で何が起こっているのかということと、そのことに対して自分がどう考えているのかということ。ストレートに作品に出す必要はないけど本質的に問われる。問われた時に答えを言えないと映画監督として名乗れないとも思う」と語る。

ヒット作を多く世に出したスピルバーグ監督が初めてアカデミー作品賞を獲得した作品が『シンドラーのリスト』であったことにも触れ、

大友監督:「世界を意識するならば題材として社会性のあるテーマを日本の作り手は意識しなければいけない。企画に社会性があるか、なぜ今かということを考えてみたほうがいい。」
と、社会性のあるテーマをもたせることの重要性を語った。

 
また、世界で戦う上で自分の中で1つ”発明”して欲しいと語る。  

大友監督:「ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』はベトナム戦争の影響もあって発明されたように、自分の人生と、その時、世の中でどういうことが起きていたかを意識することは大切。自分の人生と、世の中でそんなに大きな出来事じゃなくても、出来事が自分の中でクロスオーバーする中から、1つなにか自分の中で発明される。若く時間がある皆さんは、どんどん発明をして欲しいですね。」

荻原健太郎氏、大高健志氏、町田有也氏も交えたトークセッション

(左)町田氏,大高氏,萩原氏(右)

                                                  
さらに後半は、『東京喰種トーキョーグール』の荻原健太郎監督、クラウドファンディングプラットフォーム『MotionGallery』を主催している大高健志氏、動画配信サービス「Hulu」を運営するHJホールディングス株式会社でオリジナルコンテンツ発信事業を立ち上げプロデュースをおこなう町田有也氏をゲストに迎えたトークセッションも行われた。

3名のゲストはそれぞれの立場で感じている世界と日本について、大友監督と意見を交わした。
その中で、長編映画『東京喰種トーキョーグール』、CM、ショートフィルムという3つのフィールドで活動する萩原監督は、ターゲットに向けて突き詰めて作る重要性を語った。

萩原監督:「TVCMだと一番大きい賞にカンヌライオンズという広告賞があります。その賞を狙ってグローバルに向けて作ろうとしたものは、結果グローバルなものでなくて、それよりもターゲットなどがより明快なもののほうが海外でウケるということがあります。どうしても、色んな人に観て欲しいと思ってターゲットを広げがちですが、最初に決めたターゲットに向けてとことん狭めて突き詰めて作ることが重要です。そのターゲットが普遍性があるほど世界中の人に受け入れられるのではないかと思います。」

また、「何をやりたいのか?何に心を動かされるのか?を自分の中に持つことが大切で、やりたいことを追求し、仲間や輪を作っていって欲しい」と萩原監督は語る。

これに対し『MotionGallery』を主催する大高氏も、クラウドファンディングではメジャーでない作品が資金を集める手段に選ばれることも踏まえ、以下のように語る。

大高氏:「世間にウケるかかどうかを考えずに、自分がやりたいと狂信的な熱意を持って作品を作って、そこまで走りきることが重要かなと思います。情報があふれる時代だからこそ、一般的な観客が”自分ごと”に思えるような熱意がないといけない。その熱意が世の中の人に届く、見たい作品だと選択されるポイントとなると思います。」

「Hulu」におけるプロデューサーという立場から町田氏は、

町田氏:「ワールドワイドで戦うということを考えると、受け入れてもらうにはやはり普遍性というものに突き当たります。ずっと廃れない作品というものにも当てはまるのですが、普遍性をキチンと捉えてるかどうか、いろんなことを考えながらも、時流に合わせて社会の先を読んで作っていくということが重要だと思います。」と語った。

質疑応答の時間には、大友監督らに寄せられた参加者からの質問に対して、それぞれ熱心に答えていた。
いかにメンバーを集めるか、出来るだけ良いチームを作りたい、という参加者の悩みに対しては、世界や今を見据えたアドバイスがあった。

大友監督:「例えば、海外の有名なカメラマンの方に手紙を書いてみるのもいいかもしれない。意外とああいった方というのはビジネスルートじゃないところからきたオファーというのも面白がってくれる。生活するお金に困っていないレベルにある方というのはある種、刺激を求めている。著名なスタッフが参加することでクラウドファンディングでも支援額が増えたり、プロジェクトの信頼度が増すのではないだろうか。」
                                                  

最後まで参加者の意見に耳を向けていた大友監督。
最後に参加者たちは、次回第2回目のワークショップの課題が発表され、15分以内の映像作品を作ってくるということに。
「作品を通して本気のコミュニケーションをやろう」という大友監督の言葉に、今回のワークショップ参加者への力強いエールのようなものを感じた。12月16日(土)に実施される第2回ワークショップへ若手映画作家たちがどのような作品を持ち寄るのか、引き続きLEXUS SHORT FILMSの取り組みを追いたいと思う。
                                           

関連情報リンク

LEXUS SHORT FILMS

関連記事